源泉所得

4月 1, 2024

日本では4月から新年度が始まります。学校では入学式を迎えた学生が、新たな学びの場で心を弾ませている事でしょう。社会では入社式などを経た新入社員が、社会人として新たな一歩を踏み出し、多少の緊張感と共に自らの可能性について期待を膨らませている事でしょう。また中には配属変更による転勤で新たなチャレンジに挑戦される方々もいらっしゃると思われます。今月は転勤や赴任などでアメリカに生活拠点を移された方々に焦点を置いて、給与に対する課税権とそれらを取り巻く税法上の取扱いについて話をしたいと思います。

源泉所得

源泉所得とは文字通り発生源泉(物事の元)がある所得のことを指し、一般的に所得の発生源泉が米国にあると認められる所得を米国源泉所得 (US Source Income) と呼び、発生源泉が日本国内にあると認められる所得を日本源泉所得 (Japan Source Income) として認識します。米国税法上、所得の課税方法や課税範囲は居住身分によって大きく異なるため、源泉所得の区別を理解する事はとても重要となります。

課税所得の範囲

通常、米国居住者は源泉地の区別に係わらず全ての所得(全世界所得)が課税対象となり、非居住者は米国源泉所得のみが課税対象となります。二重身分(米国居住者と非居住者として身分が混同する状況)の場合、米国居住期間内に得た所得は全て課税の対象となりますが、非居住者期間については米国源泉所得のみが課税対象となります。米国市民や永住権保持者 (Green Card Holder) は、実際の居住地(国)に関係なく一年を通して米国居住者として取り扱われるため、全ての所得が課税対象となります。

【所得の課税範囲】

  • 米国市民は、一年を通して全ての所得(全世界所得)が課税対象
  • 永住権保持者は、一年を通して全ての所得(全世界所得)が課税対象
  • 米国居住者は、居住期間のみ全ての所得(全世界所得)が課税対象
  • 非居住者は、米国源泉所得のみが課税対象

源泉地の決定方法

先述のとおり、所得の課税範囲は居住身分によって大きく異なりますが、注意して頂きたいのが、所得の源泉地の判断は納税者の居住地や役務提供地(就業地)で行われるのではなく、通常所得の種類によって決定されます。

給与・賞与

給与や賞与など勤労に起因する所得の源泉地は、労働者の勤務地によって決定されます。その為、米国内での勤務期間中に得た給与は、給与の支給元(日本本社、または米国支社)に関係なく米国源泉所得として取り扱われます。また同期間中に出張などで日本で勤務された場合、出張された方の在籍(本社在籍、米国支社在籍)に関係なく、出張期間に得た給与は日本源泉所得として認識されます。

役員報酬

米国支社に駐在員として赴任しつつ、日本本社の役員を兼任されている方もいらっしゃると思われます。給与とは別に役員報酬も受け取られている場合、給与は勤務地によって源泉地が決定されますが、役員報酬は報酬を支払う側の法人地によって決定されます。その為、米国勤務期間中に得た給与と役員報酬は、それぞれ米国源泉所得(給与)と日本源泉所得(役員報酬)として取り扱われます。

利息・配当

利息収入や配当などは、支払う側の居住地(または法人地)によって源泉地が決定されます。その為、利息または配当を行った側が、日本の銀行または日本の法人の場合、受給する方の居住地に関係なく、日本源泉所得とし取り扱われます。

不動産収入

不動産から得る収入は、不動産の所在地によって源泉地が決定されます。その為、米国赴任中に日本の不動産から得た家賃収入や不動産売却益などは、常に日本源泉所得とし取り扱われます。逆に日本在住の方が投資目的で米国内で不動産を取得された場合、該当の不動産から得る収入は所有者の居住地に関係なく全て国源泉所得として認識されます。

あとがき

冒頭の話に戻りたいと思います。新年度を迎え4月1日に米国赴任を開始された方いらっしゃるかと思われます。赴任された方の居住身分は、それぞれ赴任前は日本居住者、4月1日以降は米国居住者となります。米国税法上、課税の範囲は、納税者の居住身分と課税の対象となる所得の源泉地によって大きく異なります。その為、課税の対象となる所得の源泉地ルールを理解する事はとても重要と言えます。

赴任後、米国内で勤務された期間中に得た給与は、支給元(日本本社、または米国支社)に関係なく米国源泉所得として取り扱われますが、同期間中に出張などで日本で勤務された場合、出張期間に得た給与は日本源泉所得として認識されます。また赴任中に得た利息、配当、家賃収入は、支払元(銀行や法人の居住地、不動産の所在地)によって源泉地が決定されますので、殆どのケースで日本源泉所得として取り扱われると想定します。

米国赴任中において、言葉や文化が異なるためカルチャーショックを受ける事があるかと思われますが、滞在中米国での生活を楽しんで頂けると大変嬉しく思います。

ようこそアメリカ、テキサス州へ。